失われた時間

 高校を卒業してから予備校に通っていた。
 そのころ初めて、日本は本当に資本主義国であると実感した。というのも、勉強しようと遊ぼうと、それが簡単に許されてしまうのだから。
 勉強しなければならないという自分の心の叫びと、遊んでしまえという悪魔のささやきとの葛藤を持ちながらだから、心境は複雑だった。さらに、私は当時病気に苦しんでいた。病気は、何事に対してもやる気をそいでいた。
 予備校はいろんな人がいた。遊ぶばかりの人。勉強ばかりしている人。わけのわからない人。私は当時一番後者に属していたと思う。勉強も遊びもそこそこで、テレビばっかり見ていた。見たいものがあるわけではなかった。ボー、とする時間は何よりも自分にあっていると思っていた。
 もう一度あのころに戻れるなら、失われた時間を取り戻したい。
 小さくてもいいから何か目的をもって、貴重な10代最後の時間を精一杯過ごしたい。

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