運転免許

 運転免許の更新に今日行った。残念ながら、ゴールドカードというわけにはいかなかったが、無事に更新してきた。
 運転免許の更新には思い出がある。
 それは7年前、Iさんの運転免許更新を手伝ったことだ。
   (以下の文が漠然としているのは、人権保護のためです)
 彼はある病気で、両下肢を動かすことができないし、上肢に問題がある。
 彼は科学少年だった。高校生の時、自室で化学実験をしていた。そのとき火薬の量を間違え、屋根が吹き飛ぶほどの爆発事故を起こしてしまった。
 社会に出た後、彼は不自由な上肢を隠すことなく、敢えて営業の仕事に就いた。一見の家では、気味悪がられ追い出されたが、明るい性格は顧客をつくった。
 しかし数年後、爆発事故とは全く関係なく、下肢をむしぱまれる病気になった。
 私は理学療法士であるにもかかわらず彼に会うまで、車は少なくとも両上肢の完全な機能がなくてはならないと思っていたが、そうではないことを身をもって教えてもらった。
 彼は入院の関係で、運転免許の更新がかなり遅れ、そのとき一緒に運転免許センターに行った。
 彼の免許更新には意味があった。その身体で一度免許を得ていたのだが、少し機能が落ちたそのとき、国がまた免許を与えるだけの身体であると認めるかどうかの確認だ。そうは言わなかったが、今はそう思う。
 苦労のかいあって 、免許は無事に得ることができた。
 彼は安心したのか、結局車には乗ることはなかった。

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