貧しい家庭環境で小学校を出て、すぐに就職して10人前後の家族を養わなければならなかった。そんななか松本清張が、「西郷札」で、懸賞デビューしたのは知る人ぞしることである。40歳を越えていた。夢はそういったものだという例えだと思う。
 彼の作品はトリックよりも、何故そういう犯罪をしてしまったのかという動機に重点を置いているものが多い。社会派推理作家といわれる所以である。「・・・殺人事件」というドラマなどの犯罪は軽微な動機で人を殺してしまうので、見る気にならない。たとえば現実の社会で、お金の横領事件がばれそうになった人が、殺人事件をすぐに起こすだろうか。ほとんどの場合、御用になってしまうのだ。人が人を殺すのはたやすいことではない。
 阿刀田高は、いい小説には@視点A切り口Bリアリティーの三つの要素が必要だとしているが、全くそうだと思う。
 晩年は別として、こうした点を備え持った松本清張の作品や実際の事件追及に関する研究において、当然文化勲章を受賞すると思っていたが、そうはならなかった。
 いつになったら、行政が学歴で人を評価する風潮が無くなるのだろうか。
        
ブレイクタイムへ       H11.8.21