いつどこで読んだ文章だったのか忘れてしまったが、次のような話を思い出した。
中世ヨーロッパでは、死刑の道具としてギロチンが使われていたのは、周知のことである。
しかし、あの悲惨なギロチンが受け入れられた理由のひとつに、即死があげられよう。ギロチン台に首を置くまでの恐怖そのものと死そのものが刑罰の大きなウェイトであって、死の苦しみはないとされているのだ。
ある科学者がその即死説に異を唱えた。
彼は落ちた頭の顔の表情がしばらく変化するのを何度も目撃していたからだ。
他の者は、表情の変化は死後の緊張の緩みに伴うもので、意図的なものではないとした。
そのある科学者は、ギロチンにかけられるある死刑囚の家族に金銭的贈与をすることを条件に、その死刑囚に実験に協力させることに成功した。つまり、こういうことだ。ギロチンによって首が切断された後、ある科学者が彼の名前を呼ぶ。それに対して、死刑囚が意図的に3度瞬きをするというものである。
そのときは訪れた。頭が落ちた後、科学者は狂わんばかりの大声で、彼の名前を叫んだ。
そのあたまの閉じられていた瞳は、1度目開き閉じられ、2度目開き閉じられ、3度目開いて閉じ、その後再び瞳が開くことはなかった。
しかし、この話は本当であろうか。
私個人としては、
「経験したことがない者が憶測だけで言い切ってはいけない」
ということを教える逸話ではないかと思っているが・・・。