ある日曜日     H11.11.14

 紺碧の空に漂ういくすじかの雲は、ほとんど停滞しているように見える。
 その下で、安達祐美がほほえんだドラッグ禁止のパンフとティッシュを配布する警察庁関係の地元の2人が公民館の出入り口で忙しそうに手を動かしている。
 テントは敷地内の公民館前で対峙するように帆をなびかせる。
 たばこをくゆらすおじさんが、遠くの小さな樹木の元の石垣に腰掛けている。おじさんは、時折わたしたちが設営している長机を見ているようだった。
 施設でつくった工芸品を即売するのが今日の目的だ。
 テントしたの3つの机には置ききれず、机下の箱に在庫品としていくつかをしまった。
 すぐにちっちゃな女の子がひとりで、牛乳パックをうまく崩して表面に千代紙を貼った小物入れを覗き込む。手にとってみるが、200円と知って急に寂しそうにする。
……お金が足りないんだな!……
「これ、100円ね」あたりに他の客がいないのを確認してから言うと、女の子の表情が明るくなる。
 最初はほとんど売れなかったが、10時を過ぎてから造花類、小物類を中心によく売れだした。机の下には在庫がなくなり、机の上のものだけになった。あと半分だ。
 ボランティアの学生にお金を持たせて、みんなのジュースをかってもらう。
 施設の利用者や職員も入れ替わり立ち替わり、売り上げに協力してくれた。本当にいるのかどうか分からない人もいたが…。
 12時30分からは、地域の人たちの演芸会が始まっていた。踊りや三味線、カラオケである。うちの職員はカラオケや三味線、利用者はカラオケにエントリーしている。
 三味線の演奏が終了した寮母さんは、弾き違いをしきりに気にしている。
 あるOBの方は相変わらず歌がうまい。堂々とした姿勢で、音響に綺麗にのった声が耳許に波動する。
 席の埋まりは半分くらいだろうか?ホールの出入り口あたりで、スタンドにホームビデオをのせている初老の人が、舞台に食い入るようにしている。
 利用者の歌はいつも通り。いつも通りとは、いつも通りということ(^_^;)
 演芸会が終わると、ホールはスピードをあげて人を吐き出し始めた。
 私たちはテントと机の整理をした後、1階と3階の展示物を引き上げた。
 紺碧だった空にはいくすじかの薄暗い雲がさしかかり、明らかに停滞を移動に変えていた。
 一匹の子猫が家路に急いでいた。

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