語らぬ実習生
理学療法士になるため現場実習に行っていたころ、3校・6人が一緒になった。中でも高知のスポーツ刈りの青年はとても優秀で、「とてもじゃないけどこいつにはかなわない」と思っていた。
股関節手術の見学で一緒になった彼は、風邪を引いていた私の咳がとても気になったようで、「出ていってくれ!」と言ったのが、私には鮮烈に印象に残っている。逆の立場でもそうしていたかもしれないと思うので恨んではいないが、彼を思い出すのにその場面は抜かせない。
彼には評価・診断の仕方をいろいろ教えてもらって、むしろ感謝している。
とにかく情熱的で素直な人だった。
その場所での3ヶ月間の実習が終わってしばらくしたころ、実習時代の友達から電話がかかってきた。
彼は九十九里浜でサーフィンをしていて、行方不明になったというのだ。
1ヶ月後、東北のある浜に打ち上げられた彼は何も語ることができなかった。
10周忌にて、ご冥福をお祈りします。
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