去年やっとホームラン王を射止めた読売巨人軍の松井秀樹はすごいバッターだ。
 本来なら、3年連続のホームラン王のはずだった。
 彼の悲劇は、ホームグランドが狭いヤクルトスワローズ(神宮球場)と、広島東洋カープ(広島球場)があることだ。以前はこれに中日(名古屋球場)も加わっていたが、ドーム球場になって松井が少し有利となった。彼がプロ入りしたときは、後楽園球場はすでに遊園地になっており、東京ドームなる巨大球場ができていたからだ。
 球場の狭さが関係する証拠として、中日からは大豊や山崎などのホームラン王が出たが、ドームになって極端にホームランが減ってしまっている。名古屋球場は滅茶苦茶な球場だった。流し打ちをするつもりでバットに当てただけの打球がホームランになっていたのだから。
 松井はそんな人たちをはねのけ、去年ホームラン王と打点王の2冠に輝いたのだから、ただ者ではない。それを遡ること2年間は、1本差に泣いている。これは明らかに、東京ドームをフランチャイズに持つ球団のせいである。
 しかし、真のヒーローはそんなものは大差でかわさなければならないと、私は思う。松井がホームラン王を取りながらも、サミ−・ソ−サの打法を取り入れようとしたのはそのためと思われる。ちなみにマグワイアの打法はプロテインで鍛え上げられたグロテスクな肉体が必要となるので日本人には向かないと考えられる。
 球を遠くに飛ばすには、バットをできるだけ速く球に当てなければならない。それにはいわゆる手打ちでは絶対に駄目であることは、野球をしたことのある人ならすぐ分かる。バットが球に当たるときには、トップスピードで体をひねらなければならない。その意識が強ければ強いほど三振の時の体への衝撃は強くなる。松井はそのために、最近脇腹を痛めていると考えるのが私の見解である。
 松井はそれほど体が柔らかいとは思えない。今の打法に加えて、腕を必要以上に伸ばした状態から肘を曲げるようにしてバットのヘッドスピードを上げることをお勧めする。回転モーメントを利用するのだ。落合のような打法である。今三振している外角球はホームランではないがヒットになり、そこそこの内角球は分けなくホームランになる。しかし、めっぽう速いストレート球を極端な内角に投げられたら三振してしまうかもしれない。
 神宮球場は今年もペタジーニが本数を稼いでいるが、本来の彼にはそんな実力は無いだろう。
 松井の追い上げに期待したいが、おそらくかわされてしまうだろう。
 松井秀樹は後楽園球場の時代であれば、わけなく60本打てる逸材である。今の巨人はONをしのぐスーパースターが不在だなんて言っている人は、野球を知らないド素人である。
 そこでだ。巨人ファンのみなさん、ヤクルトを飲もう。
 ヤクルト球団の母体が潤って広いドーム球場になれば、松井は伝説のバッターになれるのだ。

      ブレイクタイムへ          H11.8.20