学生時代に大江健三郎の本を読むまで、この病気の存在さえ知らなかった。彼の小説の登場人物のあだ名に「みつくち」というのがあったのだ。今は口唇口蓋裂という。
口唇はもちろん「くちびる」の部分、口蓋は「口の中の天井部分」のことである。口唇と口蓋が両方ともまた左右とも裂けている場合もあるし、片側性の場合もある。
口を閉じたときの外見は成人に至るまでの複数の手術でほぼ治癒してしまう。しかし、口唇口蓋裂の厄介なところは、言語障害残存と歯並びにある。特に、口蓋裂の場合は、口蓋から息が漏れてしまい、成長過程で正しい発音を行いにくく、正しい言葉を学習できない。コミュニケーション不足は、性格形成過程に影響を与えるのに充分な要素だと考えられる。また、歯が正常な位置と角度をつけて生えることが多く、矯正が必要である。
口唇口蓋裂の発生率は日本では約500人に1人だという。これは先天性疾患ではかなり確率の高いものであろう。