宮本輝

 宮本亜門じゃありません。宮本輝です。どちらも「違いの分かる男」としてCMに出ていました。しかし、宮本亜門が演出家としての能力を遺憾なく発揮していたのに対して、湖に浮かぶ大きな葉っぱに脚を伸ばして座ったままの宮本輝は、作家としての肩書きがなければただのおじさんというイメージが拭い切れませんでした。
 しかし、作家としての能力はずば抜けたものがあります。デビュー作「泥の河」は映画化されました。それでも、「さあ?」というあなたは、斉藤由貴主演の「優駿」の原作者といえば、「おおっ!」と言うでしょう。
 僕は絵は見るものだと思っていましたが、読む絵画というものがあるのですね。芥川賞作品「螢川」のラストシーンは、田舎に住み慣れた者でも、三々五々ではなく十重二十重(とえはたえ)に漆黒の闇を舞う螢たちに感動してしまいます。
 文学集を出版するときに彼の肉声を聞いたことがあります。
 お世辞にも饒舌とはいえないけれども、心の底から活字へと跳梁する文学の才能はただものではありません。
                
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