介護福祉士国家試験の実技で再試験?
H15.03.05

2003/03/03〜北海道新聞より


 二日行われた介護福祉士国家試験の実技試験で、試験官の判定ミスにより、全国で三十人を超える受験生に再試験が実施された。同試験を行っている財団法人社会福祉振興・試験センター(本部・東京)によると、再試験は初めての事態。本試験と同じ問題だったため、受験生から「不公平ではないか」との声もあがっている。

 この試験は介護サービスの現場で働く人のための資格試験。十五回目の今年は、北海道や東京など十二都道府県で約六万七千六百人が受験し、約四万九百人が二日、全国二十三会場で一斉に二次の実技試験を受けた。札幌でも南区の試験会場で千七百六十人が挑んだ。

 試験は、ベッドの下方に横たわる半身まひのお年寄りを介助し、正しい位置に直す―というもので、受験生の持ち時間は五分。一人ずつ個室で受験、ベテランの介護福祉士か看護師が務める一人の試験官が判定にあたる。介助されるお年寄りが転落するなど「危険行為」があった場合は、試験官の判断で試験を中止する仕組みだ。

 札幌会場では、試験会場を統括する試験官が精査したところ、複数の試験官から中断された五人が「危険行為に当たらない」と判定され、再試験を受けた。

 同試験センターによると、介助される人を床に下ろすなどしたことを、転落と同程度の危険行為と判定していたらしい。再試験は全国十会場で計三十人を超える。

 同センターの坂本博之常務理事は「(判定ミスは)全く想定していなかった。なぜこうしたことが起きのか、今後精査する必要がある。実技試験は、筆記試験と違い(受験者の行動について)判断基準を詳細に決めており、再試験用の問題は作っていない」と話す。

 同じ問題での再試験は不公平との指摘に対しては「そういう見方もあるかもしれないが、(受験生に)迷惑をかけたのでもう一度やることにした」と述べた。

 この試験の受験指導をしている民間非営利団体(NPO)道総合福祉研究センター(札幌市白石区)の池田ひろみ事務局長は「問題によっては解釈が搖れる。年に一度しかない試験なので、再試験を受けた人も大きな重圧を感じただろう」と話す。

 一方、札幌で受験した二十代の女性は「国家試験なのに判定ミスで再試験をやるなんておかしい。チャンスが二回になるのも不公平」と憤る。

 介護福祉士資格は介護の現場で需要が高く、近年受験者数が急増している。一回目の一九八九年は約一万二千人だったが、九八年は三万人台になり、今年初めて六万人を超えた。合格率は四−五割。


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