五木寛之が「人生の目的」という随筆本を出して、1年ほど前ベストセラーを叩き出した。
私も当時その本を読んでみた。
確か金銭的事情で、お父さんが子ども2人を抱きかかえて飛び降り自殺するという実話の衝撃的シーンから話は始まったと記憶している。そして子供は、まだ生きているお母さんを呪う遺書を残して死んでしまうのだ。お父さんは飛び降りても、子供たちをしっかり抱きかかえていたという。
この子どもたちはどんな思いで死んでいったのだろうか。
金銭的な自殺はお父さんの事情で聞いたことある話だが、子供たちは「自分はこれから死ぬのだ」ということを認識し、母親を呪って死んでいっているのだ。
著者はこの事件に胸が締めつけられると言及している。
人生の目的とはなんぞや?
五木寛之は私たちが中学校や高校で考えていた命題に真剣に答えを出そうとする。
死んでしまう人間が刹那の間に、何をしてもしれているではないか!
私は、文豪たちは命題のラビリンスに迷い込み、自殺してしまったのだと考えている。
そういったラビリンスにいることを自覚すること自体が、世間では精神分裂病と言う。文豪たちは、精神病のカテゴリーにいるのだと研究者は言う。しかし文豪に言わせれば、それを自覚し続けることができない世間の人たちが精神分裂病なのだと言うかもしれない。
さて、五木寛之は様々な理論を展開して、こう言っている。
人生の目的は、
「人生の目的を探すことである」
と。
この言葉は当たり前のようで、命題の答えを見つけたものだと思う。