木目がはっきりした壁を背にしておいた椅子にこしかけて、黎明の空を見上げると、まさに日が昇ろうとしている。 冷たくて乾いた空気が鼻孔を通り抜け、肺全体を引き締める。こんな空気を以前吸ったのは、子供の頃の初夏だった。 そのとき、一筋の光芒が空気を切り裂き、野を駆け回る子供の頃の記憶の鳥瞰図がかき消される。同時に、野鳥のついばみが聴神経の電流を強め、じんとした顔を天に向ける。